弁護士 花田 勝彦
2024.5.20
不動産登記といえば、司法書士の業務の柱であり、我々も登記手続は基本的に司法書士の先生にお願いしています。
遺産分割、離婚に伴う財産分与、不動産の処分が絡む債務整理事件など、財産的価値が一般的に高額な不動産は、紛争の対象となることも多く、最終的に不動産の登記を移転することが依頼の趣旨であるということもあります。
その意味で、不動産登記は弁護士業務にとっても重要な事項です。当事務所では、相談室に
いわゆる登記簿のサンプルをおいて必要なときは見せて説明をしています。
ここで「登記簿(謄本)」と言っているのは、法務局で1通1000円くらい支払って出してもらう「全部事項証明書」のことです。「登記簿(謄本)」と「登記済(権利)証」を勘違いされる方がいます。「登記済権利証」は、近時「登記識別情報」と様式と名称が変更され、外観も大きく変わりました。シールを剥がして中にコードが記載されているものです。「登記済権利証」も「登記識別情報」も不動産の権利者だけが保管しているものであり、誰でも取れる「登記簿(謄本)」(=全部事項証明書)とは別のものです。
不動産登記というのは、公示制度であり、公信力はないといわれます。公示制度は、不動産の所有者が変わったら、変わったことが外部から認識できる「公示」を登記により行うということです。
公信力は、登記を信頼してその不動産を譲り受けたところ、登記名義人が真の権利者でなかった場合、譲受人が保護されることをいいます。登記にはその公信力はありません。登記名義人は所有者とは限らないということです。
そう聞くと、登記の名義人が実際の所有者ではないということなんかあるのだろうか?と思うかも知れません。しかし、死んだ人の名義のままの不動産の場合、登記名義人は実在しない人なのですから、死者にその不動産の所有権が帰属することはあり得ないのです。このようなケースはよくあります。
いつまでも死者の名義のままにしておくことは不都合が生じますので、相続登記の義務化ということが問題となり、この4月1日から義務化がスタートしました。3年以内に相続登記を行わない場合、10万円以下の過料が科せられる可能性があるので、注意が必要です。かくいう私自身、父が亡くなった後の相続登記をしないまま相当の年月が経過してしまいました。この機会に登記をしようと思います。
100万円以下の土地相続登記は登録免許税が免除されることで手続を促進しようとしています。
この点に関連して、所有者不明土地の管理や利用をどのようにするのかということについても実務上よく問題となります。東日本大震災の後、この点がクローズアップされるようになりました。
遺産分割未了の不動産の所有者は、登記名義人の相続人を戸籍調査により特定しなければなりません。この作業が膨大になることもあります。年に数件はこのような依頼があるもの事実です。これまで最大で200名を超える相続人がいたケースがありました。他方で、相続人の数が余り多くなくても、相続人全員が相続放棄をした後の不動産の処分について、相続財産清算人を選任しなければならないということがあります。
昨年の法改正により、相続財産「管理人」から「清算人」に変わったのですが、制度自体がいわばフルスペックのため、手続きに時間がかかり、予納金が多額になる(都会の裁判所では100万円が相場、当県は30万円から50万円)という問題があります。
そのような不都合を解消するため、「所有者不明土地・建物の管理制度」が創設され、個々の不動産の管理に特化した新たな財産管理制度により、予納金を抑え、手続きもスピーディーになることが期待されています。
裁判を利用する場合に特別代理人を選任してもらうことで相続財産清算人の選任よりも廉価で早く手続きを進めるという実務上の工夫が行われてきたところでもありますので、この新たな管理制度がどの程度使い勝手がいいのか、実際に試してみるのも恐らくそう遅い時期ではないと思います。

