弁護士 花田 勝彦
2022.8.9
一時期若手に任せていたところもありましたが、五所川原地区全体の弁護士数が減っていることから、被疑者国選、被告人国選、当番弁護士をまた担当することにして、多い時は3,4件の刑事事件を並行して受任することも多くなりました。
被疑者段階における刑事弁護のオーソドックスな流れは、逮捕された後、72時間以内に勾留請求されたあたりに当番弁護士あるいは被疑者国選事件として配点され、警察署の中にある留置場に接見に行って被疑者と話をするところから始まります。被害弁償をすべき事案については、被害者を訪ねてお金を払い、示談をすることもあります。被害回復がなされれば、検察官も起訴猶予にして一件落着、となります。
ところが、被害弁償するにも被疑者にお金がないとか、家族や協力者が一切おらず、被害弁償ができないというケースもあります。被害弁償ができたとしても前科が多数あって起訴は免れず、実刑が見込まれるケースなど、起訴前段階ではあまり力が発揮できないこともあります。
オーソドックスでない弁護活動として、被疑者の身の回りのことをどこまで弁護人がやるのか、ということが問題となることも少なくありません。これが「裏話」の部分ということになります。
ある被疑者は、アパートを借りていましたが、起訴はおろか実刑が見込まれる事案。アパートの荷物を整理して明渡しをしてくれる家族も協力者もいない。業者を頼むお金もない。やむなく私がアパートの荷物を片付けて不動産業者に明渡しをしなければならないこともありました。部屋から布団や電化製品を搬出して、さながら引っ越し屋のようです。業者に見積を依頼したら、片付けするのに5万円か6万円かかるというのです。そのお金を払えないので、弁護人がただ働きするというのはどうにもやるせない。が、ほかにどうにもならない。
またある被疑者は、預金口座に残高はあり、通帳はあるのですが、届出印がないという。かつて通帳で暗証番号を3度間違えたため、ATMで通帳取引ができない。印鑑を変えるのも本人確認が必要であり、留置場にいるままではそれができない。万事休す、と思われたところ、被疑者はキャッシュカードをもっているという。何だよ、それなら先にそういってくれよ、とキャッシュカードを宅下げ(被疑者の持ち物を留置場から持ち帰ること)して、何とかお金を引き出すことができましたが、何度も銀行に足を運んだ徒労感がつのります。ちなみに、留置場に差し入れできる現金は、3万円までという扱いが多いようです。
最後に、これまで刑事弁護人生最大の雑用を先日経験しました。逮捕留置中に当番弁護士の依頼がきて接見に行くと、自分の車の中に小動物がいるので、助けて欲しいというのです。家族と同じペットだからと。その車がある場所は、留置場からざっと片道3時間の距離にあるといいます。車内の気温があがると人間の子どもでも生命の危険があるのですから、一刻を争う。クルマの鍵を保管している警察署と交渉し、ことは命の問題だからと言って、すぐに警察官とともに車のある場所に向かいました。幸い休みの日だったから何とか対応できたものの、片道3時間は中々ハードです。車中の小動物は無事でしたが、次はそれをどこに保管するかという頭の痛い問題です。2日ほどペットホテルで預かってくれましたが、被疑者の財布も底をついたし、さすがに弁護人がその小動物を家で世話をするというのも無理なので、やむなく保健所に連絡したところ、動物愛護センターで引き取ってくれることになりました。何度も自分の車に乗せてその小動物を連れ回したので、少し気の毒なところもありましたが、何ともこれが弁護人の仕事なんだろうか、という思いがわき上がったのも事実です。
弁護人ってそんなことまでしているの?という裏話でした。
※実際の事案を多少脚色しています。

